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追憶の彼方から放されたい 63

 結局今日も色々と試してみたけれど、やはりこれといった成果はなかった。
 本当に役に立つ日がくるのだろうか、と思わなくもないが焦っても仕方のない事だ。
 
 早めに終わる事になって、あとはお盆明けまで休みという事らしい。
 その間に大きな事件が起きないといいな、と思いながら尾崎と共に署を後にした。
 克巳の態度に変わったところも唯くんには気づかれなかったらしく変な目も向けられなくてほっとしてしまった。
 別に尾崎とそういうコトになったと言ってもいいのだが恥ずかしいだけだ。

 そのうち遊びにでも行かせてもらったら告げようとは思ってはいるけど、今日はまだ気持ちも落ち着かないのでと自分に言い訳しておく。
 ただ恥ずかしいだけ、とも言うけど、内緒だ。
 とにかく顔に出ないように気をつけたし、いつも通りにを心がけ、尾崎はどうだろうかと思っていたが尾崎もいつも通りでほとんど話す事もなく時間を終えてほっとした。

 気負っていたのか尾崎の車に乗るとはぁと溜息を吐き出し、それに気づいた尾崎にまたくすりと笑われた。
 「別に唯くんに言っていいのに」
 「分かってる。…ただ…恥ずかしいだけだ」
 「…だろうと思ってましたけど。なので俺もいつも通りにしてたでしょう?」
 「…ん」
 すっかり尾崎には分かられていた事らしい。

 「でもホントに克巳は全然俺の方も見ないし表情もいつも通りでつまらないですねぇ」
 「…つまらなくない」
 小さく克巳が答えるがこんなほんのちょっとの事でさえどきりとしてしまうんだから尾崎を見なくて正解だ。
 尾崎と二人だけだければそんなに表情を作る必要もなくちょっと安心してしまう。もう散々尾崎には笑われているから取り繕う必要もないはずだ。

 「食事どこ行きましょうか?」
 「……この間のとこ」
 「気に入ってくれた?」
 「……ん」
 夜景も雰囲気も料理も全部気に入っている。それに尾崎が悪友といった知り合いのいる所に連れて行ってもらえるのがちょっと嬉しい。

 「うーん…いいんだけど」
 「あ…別に尾崎が嫌なら…」
 「嫌じゃなくて、呆れるかバカにされそうだから避けたい気もするだけですけど」
 「?」
 「俺が浮かれてダダ漏れですからねぇ…。職場だったらまだどうにか保ってられますけど、プライヴェートだと克巳にべたべたしちゃいそうだし。あそこ雰囲気もいいから…それでもいい?」

 尾崎が意地悪そうな笑みを浮かべて克巳の方をちらっと見ながら聞いてくる。
 「……いい」
 「いいんだ?じゃあ克巳も気に入ってくれた事だし行きましょうか。でもちょっと時間が早いから…まだ明るいし。映画でも見てデートしましょうかね」
 デ、デート…?

 「カップルシート取る?」
 「い、いや…ちょっと…それは…」
 いつもは見たい映画があれば一人でふらりと行ってみてくるだけだけど…。デートなんて…とうろたえてしまうとそれをも尾崎は見て楽しんでいるらしい雰囲気が伝わってくる。
 「早く帰りたい気持ちもあるんですけどね、克巳を楽しませたいってのも本当なので」

 「………ありがとう」
 小さく克巳が礼を言うと尾崎ははぁと小さく息を吐き出す。
 「……なんでこんなに可愛いかな…」
 「だから…それはないと思うけど…。そんな事誰にも言われた事…」
 あ?そういえば光流くんと唯くんにも言われたか…?と言葉を止めたら尾崎が信号で車を止めゆっくりと克巳を見た。

 「…誰かに言われた?」
 「え?ああ、光流くんと唯くんに言われた。…そういえば」
 「どんな状況で?」
 「え…?」
 尾崎が好きだとか分かられた時だったから…ちょっと言えない、と口を噤む。
 「克巳?」

 「……言わない」
 「ふぅん?あとでゆっくり聞き出す事にしよう。可愛いところは俺にだけかと思っていたのに違ったか…」
 「や…そうじゃなくて…」
 尾崎の雰囲気が剣呑なものに変わっていくのが感じ取れた。
 「…尾崎…?」

 「独占欲が強くて嫉妬深いたちですけどいい?もうダメって言われても手遅れですけど」
 「…別にいい…。俺にだけ…なら」
 「………はぁ」
 尾崎が剣呑な雰囲気を溜息と共に散らした。

 「キミには負けるな…素でそういう事言うんだから…。そういう所は隠しておいて欲しいんですけど?ライヴァルは増やしたくない」
 「………おかしいだろ?」
 「全然。自覚が足りないみたいですが。武川本部長の息子さんは克巳を狙って…」
 「ない!馬鹿な事言って!」
 「…馬鹿ですよ?」
 にっと笑った尾崎の顔がちょっと怖い。
 
 
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