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追憶の彼方から放されたい 60

 何もしないで出てきていいのだろうか…?
 世話になるばっかりで克巳は何もできなくて、結局貰った合鍵を自分の家の鍵をつけていたキーホルダーにプラスしてその鍵で尾崎の部屋の鍵を閉めて出てきた。

 何かしたくても出来ない自分がもどかしいな、と思う。
 唯くんだって色々してるのに。
 でも自分の家に行ったら何もしなくともいいわけで、どうしたものかと悩んでしまう。

 身体は多少のだるさはあっても大丈夫そうで、暑く太陽がぎらぎら照る中を駅に向かって歩いた。
 明日また仕事とはいえ尾崎は一緒のはず。そしてその時間連絡の為に尾崎は今日電話をくれるはずだ。
 どうにも気恥ずかしくて尾崎に対する口調が無愛想になっている時がある。それは前からだから尾崎は気にはしないみたいだが本当は唯くんみたいに素直になりたいのに。

 それでも尾崎は十分克巳を甘やかしているけど…。
 昨日も結局尾崎を椅子代わりにしたまま寝てしまってベッドに運んでくれたらしいし。
 何度も尾崎の手を煩わせているとは思う。寝こけた時も熱出した時も。別にわざとじゃないのだが…。
 尾崎の事ばかりを考えながら家に帰った。
 考え事をしていたからか早かった気がする。

 「…ただいま」
 「克巳さん、おかえりなさい」
 家政婦が克巳の声に玄関に出てきた。
 「雅彦さんから昨日お電話あったんですけど、また連絡するとか言ってらっしゃいました」
 「…雅彦?」
 誰だ?それ?と克巳が頭を傾げると家政婦が苦笑した。

 「佐竹方の…」
 「…ああ…この間の法事にいたな、そういや…。俺は用事もないけど…なんだろう」
 年はちょっと上なはず。なんだっけ…祖父さんが兄弟だから何になるんだろう?大叔父さんか?の子だったはず。顔は思い出したが血縁関係がうろ覚えだ。

 そういえば克巳は小さい頃からソイツが好きじゃなかった。目に金がチラついていたし、あとは克巳の力にも興味を持っている。
 この間もしつこくまだ変な力あるのか、とかこそりと耳打ちするように聞いてきていた。表立って大きい声で言う者は父親の前もあっていないがこそこそ言われているのは知っている。面と向かって聞いてくるのはコイツ位だ。

 しかもその目には利用してやろうという目論みが浮かんでいるのがもろに分かる位に欲の目だ。
 父親の経営する会社に勤めているはずだが、この間の席で政治家と懇意にしてるとか自慢していた。その相手の名は出さなかったが。
 それが自分に何の用事か。

 そんな電話は取り次がなくていいと言いたい所だが目的も分からないので分かった、と返事するに留めた。
 ろくでもないような事だ、という気はする。
 「お電話折り返しいたしますか?」
 「いやいい。…あと俺は部屋にいるから」
 「かしこまりました」

 折角の尾崎の所からいい気分で帰ってきたのにほんの少し水を注された気がするようだ。
 あんなのもう法事とかに呼ばなきゃいいのに、と思いつつもそれを決めるのは父なので黙っているしかない。
 そんないつかかってくるか分からない電話よりも課題を済ませてしまおう。
 尾崎に一泊で出かけるのも誘われたし、またいつ泊まるかもしれない。あとで泡吹かないように出来る時に片付けとくに限るだろう。

 この間まで全然やる気の起きなかった課題をさらさらとやっつけていく。
 自分でもかなり現金だとおかしくなってしまうが、心は正直だった。
 課題の合間に克巳はキーホルダーを出して鍵を眺めた。
 家の鍵に尾崎のアパートの部屋の鍵がプラスされたのだ。

 課題さえ終えればいつでも行っていい。
 唯くんに簡単になにか出来る料理でも教えてもらおうか?いつも自分は何もできないから…今度は尾崎の仕事の時に行って尾崎を待ってるのもいいかもしれない。
 尾崎はしなくていい、なんて言っていたけれど、自分がしてみたいんだ。
 こんな事考えるのは自分でもビックリだが。

 意外と自分も可愛いところがあるじゃないか、と一人で自己満足する。
 いや、それは出来ればの話で、はたして自分に出来るかどうかが謎だ。
 「うーん…あっ」
 そんな事考えるのは後!と克巳は首を振って余計な事を頭から追い出した。
 でもそんな事考えるのも楽しいと思えるんだから脳内に花が咲いてるのは間違いなかった。

 
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