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月・雪・花 プロローグ

 「彰(しょう)兄!お城から電話入ったよ?」
 「…お城から?」
 妹のエリカが仕事から帰ってきた彰吾にそう声をかけてきた。
 「………仕事か?」
 「勿論!彰兄、したいってずっと言ってたでしょ!?」
 「じゃあ…お城は彰吾が指揮を執れ」
 「…お父さん!……いいんですか?」

 妹のエリカが電話を受けたらしく、それを聞いたお父さんが言ってくれた言葉に彰吾は目を見開いた。
 「良いも悪いも俺らにゃどっちかっていったら専門外だ」
 「はい……はい!」
 やった!と思わず彰吾は握り拳を作った。
 「いいけど…ありゃ大変だろう…何年放置されてた?庭は広いし…かなり時間かかるな…」
 「そうですね…何年だろう…?俺が小学校の頃だな…」
 「10年は過ぎてるって事か」

 やれやれとお父さんが溜息を吐き出した。
 「こりゃ大変だ…」
 …大変だけど、遣り甲斐はある!
 彰吾は自分の夢だった仕事が舞い込んできてやる気が俄然増してきた。
 「お城って売りに出てたか?」
 「いえ…聞いた事ないですね」
 仕事の道具をトラックの荷台から下ろしながらお父さんと会話を交わす。

 お父さんとは言ってはいるが義理の父だ。本当は血縁関係などない。
 彰吾の本当の父親とエリカのお父さんは無二の親友で、彰吾の母親が病死し、その後父親が頑張って一人で育ててくれたけれど突然死。多分、仕事と育児で過労だったのだと思う。
 それが彰吾がまだ幼稚園の頃だった。エリカはまだ生まれていなくて、でもよくおじさんの所には遊びに来ていた。
 そして親友の子だってだけで彰吾を引き取って育ててくれた。
 そのあとエリカが生まれて。

 自分を育ててくれたおじさんに…お父さんに感謝しない日はない。
 本気で怒ってくれ、本気で可愛がってくれたのは十分すぎる位分かっている。
 お父さんと呼ぶのにもなんの抵抗もない。
 …ただ今は一つ問題がある。
 それが大問題なのだが…。

 「彰吾」
 「はい」
 「お城…頑張れ。お前は造園業じゃなくてガーデナーになりたいんだろ?本当は」
 「そうですけど。日本じゃあ、それにここじゃ、ね。俺は造園業も好きですよ?ずっと小さい頃からお父さん見てカッコイイなと思ってましたから。刷り込みです」
 「…ずっと小さい頃からついて回ってきてたもんなぁ」
 「すみません。今考えると邪魔でしたよね」

 彰吾は苦笑してしまう。今でこそこうして家業の造園業を手伝える位一人前になったが、子供の頃はただの邪魔者でしかなかったはずだ。それでも嫌な顔しないでどこにでもお父さんは彰吾を連れて行って木の事を教えてくれた。
 「年数だけで言ったら一人前の年数だな」
 豪快にお父さんが笑い飛ばす。
 「しかしお城なぁ…どんな人がくるんだか…」
 「そうですね。でも手入れを頼む位なら庭を潰すとか…考えてないですよね?」 
 「だろうな。潰すなら解体業者だろう。しかし、今はお化け屋敷みたいになっているだろう?…いやぁ…ありゃ大変だ」
 「………ですよね。でも俺、あそこのお城の庭見て西洋庭園に興味持ったんで」

 お城というのは近所の洋館だ。田舎の日本家屋が並ぶ中で一軒だけが洋館。その昔どこかのお金持ちの夫婦が別荘感覚で作ったらしいが…。彰吾が小学校3年生の頃まではおばあさんが一人で住んでいた。そのおばあさんがいなくなってからはずっと放置されていたのだが…。
 自分が小学校3年ということは9歳か?
 …ということは今から一六年前…。

 その間木や草は伸び放題…。洋館という事もあって今はおどろおどろしい雰囲気になっている。
 あそこに人が住むのか?
 どんな人が来るのだろう?…まぁ、こんな田舎に来るんじゃやっぱりどこかのお金持ち老夫婦って線が濃いだろう。
 願わくは金払いのいい、彰吾のしたいように庭を弄くらせてくれる人だといいのだが、と願ってしまう。
 ずっとおばあさんがいた頃の洋館の、それこそお城みたいな庭を柵の外から眺めていた。

 一度だけ入って見せてもらった事がある。
 まるで別世界のように感じたものだった。
 …思えば小さい頃からちょっと変わっていたのだとは自分でも思う。
 好きな本は植物図鑑で、興味を持ったのは庭や木々や草花だった。
 そして洋館を見ておとぎの国のお城みたいだと思い、こういう庭を造ってみたいと思ったのだからどうしたって普通の子とは違ってた。

 家が造園業なのでそこは何も問題はなかった、といえばそれまでだが。
 あの自分の小さい頃に見た記憶…。
 今は見る影もなくなってしまったが。
 もう一度自分の手で造り出せるのか…?
 ぐっと彰吾は手を握り締めた。

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昨日の分の拍手コメお返事前のあとがきのコメ欄開けて
書かせていただきますね~(><)
まだ書いてないですが…^^;
お心当たりの方はあとでチェックしてください~
遅くなってスミマセン…m(__)m

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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